2009年5月16日土曜日

Postscript 「フリーランサー・もう一つの労働問題」


 「VJが訊く!」ホストの遠藤大輔です。第一回の5月6日、雨の中お集まりいただいた皆さん、ありがとうございました。また、この機会に河西さん、インディユニオンの皆さんと出会えたことを嬉しく思います。今後ともよろしくお願いします。
 イベントの内容については、すでに書かれていますので、上映作品「フリーランサー・もう一つの労働問題」についてあとがきめいたことを。
 まず、感想のなかで何人かの方に「映像がよかった」「よくある市民メディアの作品と違って撮りっぱなしじゃないんですね」とご指摘された点、大変嬉しく思いました。<映像は一人歩きして、初めて作品>というのが、われわれの基本的ポリシーであり、作家としてのプライドでもあるからです。わかる人にしかわからない、そういうメッセージでは人を動かせないと思っています。報道の仕事では、日頃さまざまな制約のもとで四苦八苦しているというのもあって、個人的にも久々に思いのままに取り組んだ充実感がありました。
 とはいえ、たったの9分ですし、取材日数も少ないので、ショートドキュメンタリーと銘打ってはいるものの、実際はインタビュー集に毛の生えた程度のもの。作品の表現云々より、3人のフリーランサーの方々から貴重な体験をご披露いただけたことを大変ありがたく思っています。
 フリーランサーの労働問題は、まだまだ社会的に認知されていないということもありますし、それ以前に、われわれ自身がそれをはっきりとは自覚できていないというレベルにあります。世間では、派遣切りの問題やら、自殺問題などが話題になっていて、ある意味では根っこの同じ問題であるにもかかわらず、なかなか議論の俎上に乗らない。そこをどうにか乗せてみようというのが、今回の企画だったわけですが、実際のところ難しい。
 われわれ自身もそうですが、クライアントに生殺与奪の権を握られているフリーランサーは、派遣労働者以上に声を上げるのに勇気がいります。酒の上の与太話で、共感し、愚痴を言い合ったとしても、いざ公的にそれを語るとなると誰もが躊躇してしまいます。皆でデモをして<企業はフリーランサーの人権を尊重せよ><同一労働・同一賃金の原則を守れ>と叫べたら、どんなに気持ちがいいでしょう。でも、そういう状況ではないんです。
 だからこそ一歩踏み出す必要があると思ったわけですが、やはりカメラを前にして、自分の苦しい状況を語ったりすることは決して気楽にできることではありません。詳細なプロフィールはJamuoさんの書き込みにありますが、お三方ともに相当な実力者です。各々の方々のプライドのありようをなるべく尊重するような表現を心がけましたが、なかなか神経を使う部分でもありました。惨めさを強調するのではなく、<実力があるのに、人権が尊重されない>という点が作品上重要なポイントでもありました。この難しい作業にあたり、自らのリスクを承知でご協力いただいたことに、心から感謝したいと思います。堂々と人生を語っていただいたことで、会場の皆さんもわれわれも大きな勇気を得た気がします。
 この成果を大切に、今後とも手抜きなしの表現で<新自由主義破綻のもたらした現実>に迫っていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。今回の作品には、すでに「他でも上映したい」とのありがたいお申し出もいただいておりますが、権利関係をクリアしなければならない点もありますので、今しばらくお待ちいただければ幸いです。いずれ何らかの形で公開できるよう、検討します。
 「VJが訊く!」次回は7月11日(土)、”派遣村村長”湯浅誠さんを招いて、貧困問題の現状に迫ります。

なお、この機会に、自分自身のブログも設置いたしましたので、お立ち寄りいただければ幸いです。
「遠藤大輔の徒然草」http://endo-vju.blogspot.com/

ビデオジャーナリスト・遠藤大輔

(画像は「フリーランサー・もう一つの労働問題」より)

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